テレビで初めてキーシンの演奏を聴いたのは、30年以上前、カラヤン&ベルリンフィルのチャイコフスキーのピアノコンチェルトでした。
80歳のマエストロに天才と言わしめた17歳の繊細そうな青年、当時の私はただひたすら感動し、何度も何度も録画したビデオを見たことを覚えています。
そして、20代から、機会があるごとにコンサートに。
そんな彼も50歳。先日の来日公演、神童から巨匠へ…歩み続けるって、すごいことですよね。
今年7月に、唯一の師、カントール先生が97歳でご逝去されたとのこと、近年は、コンサートで先生のお姿をお見掛けすることもなく、お元気でいらっしゃるのか気になっていました。
以前の来日公演、サントリーホールでは何度か、カントール先生のすぐ後ろの席でした。
いつの時も温かく彼を見守る先生のお姿、先生の柔らかな笑顔を思い出しました。(レッスンは、厳しかったようですが。)
カントール先生は、模奏をなさらない、とキーシンの自伝に書かれていましたが、言葉だけで音楽を伝える、これは伝え手にとっても、受け手にとっても大変なことのように思います。ですが、このことで、キーシン自身の音楽性が引き出され、深い探求心が続き、カントール先生が唯一の師になられたのではないでしょうか。
先生との出会いと恵まれた才能、本人の努力、どれ1つなくしても、この演奏は生まれないのだ、と思うと奇跡の重なりのように感じます。
今回の恩師に捧げられたコンサート、素晴らしい先生とピア二ストに感謝。